執着
                
 
 「おい、ヒナタ。ネジの野郎モテるな。」

 キバがヒナタに促すように、遠くで女の子に囲まれているネジを見た。

 「そ、そうだね。ネジ兄さんはきれいだし強いからね・・。」

 はにかむように答えるヒナタをキバは「ふうん」と見詰めた。
 
「お前は?ネジの事好きじゃねえのか?」

 「あ・・。え・・と・・。」
 
 「やっぱり、今でもナルトかよ?」

 「ナ、ナルト君はそんなんじゃ・・・」

 赤くなって俯くヒナタ。大人しくて優しいヒナタをいつしかキバは好きになっていた。

 「なっ、これからデートしねえか?」

 「え?でもまだ演習が・・」

 紅は所用でいない。いつも邪魔なシノも特別任務でいない。キバは好機とばかりにヒナタを口説き始めた。

 「なあ、いいじゃねえかよ!」

 「で・・でも・・」

 演習をさぼる事をためらっているのか、また違う事で躊躇してるのか、ヒナタは歯切れが悪い。

 キバは大胆にもヒナタを抱きしめ頬擦りした。

 「きゃっ!!」

 「へへっ。なあ?デートしようぜ?」

 調子にのったキバはヒナタのまろい胸へと手を伸ばそうとした。

 が。

 「ヒナタ様から離れるんだ。・・・キバ。」

 凄まじい殺気を放って、ネジがキバの手首を掴んでいた。

 ギリィッ!!

 「でっ!!」

 思い切り捻り上げられキバは呻いた。

 その隙にネジはヒナタに目配せし、ヒナタは躊躇いながらもその場から去ってしまった。

 「ヒ、ヒナタッ!!」

 慌ててキバはヒナタを追いかけようとするが、更に手首をネジに締め上げられ断念する。

 「畜生!!なんで邪魔すんだよ!!」

 「宗家を守るのが分家の仕事だ。」

 ネジは容赦なくキバを更に締め上げた。呻くキバ。

 「ててっ!!分かったよ!悪かったって!!」

 「・・二度とヒナタ様に不埒な真似はするなよ?」

 やっと解放されてキバは痛む手首を擦りながらネジを恨めしそうに睨んだ。

 「全く、殺気立つ程の事かねぇ?」

 「まだ懲りないのか?」

 ネジの目がスウッと細められ、慌ててキバは首を振った。

 「フン。」

 立ち去ろうとするネジにキバは言った。

 「よう、アンタまさかヒナタが好きなのか?」

 振り向きもせずにネジは答えた。

 「ああ。」
 
 「おいおい、ネジ、アンタもてるだろ?他にいくらでも美人な女がいるだろが。」

 キバは笑いながらネジの隣に立つ。怪訝そうにネジはキバを見下ろした。

 「それを言うならキバ、お前こそ女にモテるだろう?」

 「へっ。他の女なんて!ヒナタに比べたらそんなの目もいかねえ。

   俺はな、アイツの中身に惚れてんだよ。もちろん、外見も申し分なく愛らしいけどよ。」

 キバは照れながら言った。

 ネジは大きく溜息を吐きながらキバを睨んだ。

 「これだから嫌なんだ。」

 「は?」

 「俺はこれまでヒナタ様を狙う不埒者どもを懲らしめてきたが・・

  皆が皆、ヒナタ様の性格の良さに惚れたという。諦めさせるのに美しい女を宛がっても靡かない。

              痛めつけても懲りない。相当苦労しているんだぞ?」

 「テ・・テメエ、女宛がうって・・」

 驚愕するキバを無視してネジは陰湿に哂った。

 「・・そういう訳で、俺は最後通告をしてやった。これで漸く皆諦めてくれたよ。

        だから、キバ、お前にも言っておく。」

 「何だよ?」

 「ヒナタ様は俺と既に深い仲だ。毎晩愛し合っている。諦めろ。」

 キバは声にならない雄叫びをあげたのだった。



 
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