王道
「ヒナタ様、ナルトの見送りに行けたのか?」
ヒアシが居ない所では敬語を使わないネジの言葉にヒナタは振り返った。
相変わらずクールなネジの顔には先ほどの優しげな表情は微塵もなかった。
あくまで無表情。
「あ・・うん。そっと陰から見送ったよ・・」
「ふん。相変わらず引っ込み思案だな。そんなんじゃ、いつまでも想いは届かないぞ?
全くアナタは何事もダメだな。」
盛大な溜息と共にネジは吐き捨てるように言った。
それにヒナタは思わず身を竦ませた。
正直まだネジのことは苦手だった。
ネジの師で宗主のヒナタの父がいるときはその娘たるヒナタに殊更丁寧に仕える反面、
陰ではぞんざいに扱う。
その器用な二面性もさるものながら、かつての中忍試験での冷酷な仕打ちが
まだヒナタのなかで恐怖となって残っていて、彼を苦手に感じさせていた。
それでも争いを好まない温厚なヒナタは普通に彼と接し、陰でいまだに馬鹿にされようとも
父に告げ口をしたりなどしなかったので、それが余計にネジを増長させる原因となっていた。
「ナルトに告白しないのか?」
「え?」
「このまま陰でみてるだけなのか?」
ネジの白い双眸がヒナタを睨みつける。
何処か怒っているような鋭い瞳にヒナタは思わず俯く。
「あ・・あの。告白とかそんなの出来ないよ・・。ナルト君は好きな子がいるし・・。迷惑かけちゃうし。」
「なんだ。諦めてるのか・・?」
「あ・・憧れだから!・・。恋とかじゃないし、ナルト君は私の目標で勇気の源だから!」
「・・・。」
「ネジ兄さん?」
「アナタは紛らわしいんだよ。傍からみたら恋にみえるぞ?」
ネジは又大きな溜息を付いた。
でもこころなしか表情が柔らかく見える。
「ふん。やっぱりアナタには俺ということか・・。同じ一族だしな。ヒアシ様も公認だし。」
「え?」
「幼い恋より、本当の恋を教えてやる。」
そう言うとネジはヒナタを抱き寄せる。
思わぬネジの行動にヒナタは声も出せないほど驚き固まってしまう。
「好きだ。ヒナタ様」
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