銀の指輪



 「きれいだったね、サクラちゃん・・」

 「ああ、」

 帰り道ヒナタは花嫁の姿を思い浮かべネジに話しかけていた。

 ナルトが恋焦がれた美しいサクラ。華やかで明るくて魅力的で・・。ナルトに望まれ彼と結ばれた。

 「ネジ兄さん、ネジ兄さんも華やかな女の人が好き?」

 小さな嫉妬から出た言葉。

 とうとう一度もナルトに振り向かれなかった自分が何故か惨めで、

 思わずこの優しい従兄に慰めてもらいたくてヒナタは聞いていた。

 (まさか、俺は華やかな女は苦手だ。)

 そう言われるのを期待してヒナタがネジの答えを待っていると彼はさらりと言った。

 「そうだな。俺も華やかな方が好きだな」

 ヒナタはそうと小さく答えた。内心酷く落ち込んでいた。

 だがネジはそんなヒナタを気にもかけず、珍しく饒舌になり話を続ける。

 「ナルトの金の指輪は派手で、目立ちたがり屋のあいつらしい選択だ。当然花嫁もあいつらしい選択だった。」

 ネジがヒナタの顔を覗き込んだ。その瞳に浮かぶ色にヒナタは息をのむ。ネジが微笑した。

 「あなたは大人しすぎる。金の指輪は似合わない。無理がある。」

 ネジの言葉は、ナルトに憧れ続けるヒナタにもう諦めろと暗に告げていた。

 「分かってるよ・・。もう諦めてる。で・・でも、少しぐらい慰めてくれても・・・」

 「嫌だ。」

 「いじわる・・・」

 「派手な女は、俺には似合わない。」

 ネジはゆっくりとヒナタの頬を撫でた。

 「なあ、ヒナタ様、俺にはアナタが似合うと思わないか?」

 「えっ?」

 「そして、アナタには俺が一番似合うと思う・・・」

 二つの姿が重なった。それは始めてのキスで・・。

 月光に青く照らされながらヒナタはやっと満たされていた。


 金の指輪は似合わない。でも、この月の様な銀の指輪なら許されるかもしれない・・。こんな自分でも。


 (ヒナタ様、アナタはサクラなんかよりも十分華やかで美しい・・。だがそれは言ってやらない・・。

   長年待たされたんだ。少しぐらいは苛めてもいいだろう?)

 甘いキスに酔いながらネジはそう思っていた。

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