歪み(サスヒナ、ネジヒナ)
「いやっ!!誰か助けてっ!!」
ヒナタは自分を抱きすくめる少年の胸を強く押した。
ぐらりと体勢を崩して少年はヒナタから離れた。
その隙を突いて彼女は逃げ出した。
人気のないこの場所から早く離れなくてはとヒナタは焦りながらも全力で走り続けた。
鬱蒼とした森から抜け出し視界が開かれ、その先に佇む人物を確認しヒナタは安堵の笑みを零した。
「ネジ兄さん!」
勢い良く彼にヒナタは抱きついていた。
一つ年上の優しい従兄の広い胸にヒナタは顔を埋め何度もネジの名を呼んだ。
「どうした?何かあったのか?」
常ならぬヒナタの行動にネジは顔を顰め心配そうに言った。
ヒナタはフルフルと小さく震え何かを思い出し脅えていた。
その時、ガサリと草を掻き分けわざと音を立てて少年が姿を現した。
「サスケ?」
「なんだ・・。あんたか。」
びくりとヒナタの身体が大きく震えた。それにネジは察した。
「どういうつもりだ?ヒナタ様に手を出そうとする等」
ネジの殺気を含む低い声にサスケはにやりと笑った。
「俺に靡かない女なんて珍しいと思ってな。からかっただけだ。悪かったな、ヒナタ。」
ヒナタは恐る恐る顔をサスケに向けるがネジから離れようとはしない。
それを見てサスケは不愉快そうに眉を顰めた。
「何だ、ナルトじゃなくてネジが本命なのか?だったら最初からお前なんかに用はなかったのにな」
「貴様・・。」
「俺はナルトのものが欲しいだけだ。あいつが心を寄せるもの、あいつを慕うもの全て壊してやりたい」
「サ・・サスケ君?」
「ヒナタ様、相手にするな。」
ネジはヒナタを更に強く抱きしめる。それを見てサスケが益々表情を険しくした。
「おい、ネジ。ヒナタから離れろ!」
「どうしてだ?お前の言うとおりヒナタ様は俺と付き合っている。ナルト等俺たちには関係ない。興味もないだろう?」
「ちっ!」
サスケは舌打ちすると踵を返して音もなくかき消えた。
「ネジ兄さん・・ありがとう・・」
静かな声がネジの耳に入る。ヒナタはまだ脅えている。
「あなたは注意が足りない。もう人気のない場所で男と二人きりになってはだめだ。例え見知った相手でも」
「はい・・気をつけます・・ごめんなさい」
ネジはヒナタの額に口付けを落とすと彼女を優しく抱きしめた。
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