ネジ兄さんの気持ち
初めて会ったとき俺は一目であの人を好きになった。
4歳児が3歳児に恋をするなど信じられんだろうが、本当の話だから仕方がない。素直に可愛いと思った。
あのモジモジとした仕草も恥ずかしがりやな所も実に好みで、俺は大人しくて優しいあの人に夢中になっていた。
だが、父が辱めを受け、更に命まで奪われ、さすがの俺も憎悪を抱いた。
日向宗家に対して。その嫡子であるあの人に対してまで。
それからは、どんなにあの人が俺を兄さんと呼んでもその思いに応えることはなかった。
従兄として、優しい兄のような存在として、あの臆病で優しい少女は昔の俺を求めていたが、
憎悪で闇に落ちた俺には疎ましいだけだった。
宗家が憎い。宗家の嫡子が憎い。落ちこぼれのあの人、日向ヒナタがいつも頭から離れなかった。
俺は俺より弱いヒナタ様が許せなかった。俺より弱いヒナタ様が俺の主になる等納得が出来なかった。
そんなある日彼女が下忍になったと聞いた。目の前が真っ暗になった。
あの優しいヒナタ様が忍?無理だ。きっと死んでしまう。あの人は忍びには向いていない。
宗家の嫡子から外されたのだと理解したのと同時に彼女の身が心配で堪らなくなった。
そんな時皮肉にも彼女と対戦する事になった。何度も睨みつけ彼女を怯えさせる。
(憎まれてもいい。この戦いで、忍を辞めるよう罵ってやろう。気の弱い彼女のことだ。
間違いなく棄権するだろう。そうしたら、分家相手に弱腰を見せたとして彼女は間違いなく
忍を辞めさせられ、正式に跡目からも外されるだろう。
ヒアシ様は弱者が忍を続け日向の名を汚す事を許さないからな。)
俺は決意していた。
ヒナタ様がそれによって宗家でなく、分家に落とされたら、責任を取って妻に迎えようと。
彼女と年が近く最も釣り合う家柄なのは俺しかいないのだから。
必ず宗家は俺とヒナタ様を娶わせるだろう。
父の敵だが、宗家でなく分家に降嫁すれば優しく出来そうな気がした。
もうすぐヒナタ様が手に入る。俺はらしくもなく高揚していた。表には一切出さぬよう気を引き締めた。
だが彼女は他の男に想いを寄せ、その声援に何度も立ち上がる。先刻傷薬を渡していたあの男の声に。
(あんな落ちこぼれに!!)
俺は彼女に対して激しく憤った。これは嫉妬だ。醜い片恋の惨めな嫉妬だ。
いつしか俺は彼女に対して殺意を抱いていた。
そしてそれは最期彼女が俺を哀れむように同情した時爆発した。
その後は自分でも反吐が出るほど捻くれてしまった。
彼女を心配するナルトとかいう落ちこぼれにけんかを売るほどに。
だが、その落ちこぼれが俺を闇から救った。
皮肉なものだ。恋敵に救われるなど・・・。
だが漸く俺にも分かった事がある。
彼女がナルトに惹かれた理由。
アイツは前向きで自分を信じていた。それに俺とヒナタ様は光を見たのだ。
俺は彼女の求めている昔の俺に戻って彼女を守ろうと決意した。
兄のように彼女を守る。この恋は隠したまま。
ナルトに憧れる彼女を応援してやろう・・。だが、それは今のうちだけだ。
なぜなら彼女は一族以外の者と契る事は許されない。
しかもナルトは違う女を追いかけている。
・・だから俺は余裕でヒナタ様のナルトへの想いを観ていられるのだ。
そして、彼女がそんな俺に信頼を寄せ、俺の存在の大きさに気づいたときに
初めて俺は彼女に愛を囁いてやろうと誓っているのだ。
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